【諦めることは悪くない】未来のために自分の優先順位を考えよう

書評

辞書を引くと「諦める」とは「見込みがない、仕方がないと思って断念する」というネガティブな意味で使われています。

しかし、あるお寺の住職が言うには別の意味があるそうです。

「諦める」という言葉の語源は「明らめる」で仏教では、心理や道理を明らかにしてよく見極めるというむしろポジティブなイメージで使われる言葉なのです。

さらには「諦」という漢字には「さとり」の意味もあるそうで、為末さんは「諦める」という言葉を「自分の才能や能力、置かれた状況などを明らかにしてよく理解し、今この瞬間にある自分の姿を悟る」と解釈しました。

諦めるということはそこで「終わる」とか「逃げる」ということではない。

だから物事を諦めるのを悪いことのように思うのはやめましょう。

手段を諦めることと目的を諦めることの違い

目的は諦めない

元陸上選手の為末大さんは中学3年生の時に100m、200m、400m、走り幅跳びなど複数の種目で中学ランキングの1位になる程の実力者でした。

ところが、順風満帆に思えた陸上人生も高校3年生のインターハイから狂い始めます。

為末さんは早熟で高校生の時には肉体は完成していました。

当時の為末さんは同年代の日本人の中ではトップクラスにいたそうですが、為末さんは中学3年生のときに成長が止まってしまいます。

逆にライバルたちはどんどん成長していきます。

高校3年生の時点ではベストタイムを抜かれてはいませんでしたが、身体の成長、タイムの伸びをグラフで見るとそう遠くない時点で抜かれるのは明らかだったそうです。

このまま、100mを続けてもトップを取れない。

18歳といえばまだまだ夢に向かってがむしゃらにがんばっている時期に突きつけられた現実は僕たちには計り知れないものだったと思います。でも、為末さんの目的は陸上でトップを取ること。

もっと言うとオリンピックでメダルを取ること。

この明確な目的があるために100mより勝てる可能性の高い400mハードルに転向を決意します。

100mという陸上の花形種目からマイナー種目である400mハードルに移ったときに強い葛藤があったそうです。

「割り切った」

「諦めた」

「逃げた」

こうしたネガティブな感情を持ち続けて、それを人にも言えない。そのストレスは想像を絶するものだったと思います。

でも、次第に

「100mを諦めたのは諦めたのは、勝ちたかったからだ」

「勝つことに執着していたから、勝てないと思った100mを諦めた」

「勝つことを諦めたくないから、勝てる見込みのある400mハードルに転向した」

つまりは、勝つという「目的」のために「手段」である100mを「諦めた。」

というポジティブな意味を見出すことができるようになったそうです。

多くの人は、手段を諦めることが諦めだと思っていますが、そうじゃない。目的さえ諦めなければ手段はいくらでも諦めてもいい。

そう思うと、「諦める」というネガティブな言葉もネガティブではなくなっていくのです。

サンクコストという「諦める」の天敵

経済学にはサンクコストという考え方があります。

これは埋没費用といってすでに支払ってしまってもう戻ってこない費用、労力、時間のことです。

例えば、映画館に映画を観に行って最初の30分でめちゃくちゃつまらないと感じたとします。

でも、映画の代金は払ってあるのでチケット代は帰ってきません。これがサンクコストです。

あと1時間半のこっている映画をあなたならどうしますか?ここで2つの選択肢が出てきます。

1つは、つまらない映画に見切りをつけて映画館を後にします。

もう一つは、大半の人がこっちだと思うのですが、モッタイナイという理由だけでつまらないと分かりきっている映画を終わりまで観てしまいます。

つまり、諦められないのです。

ここで気を付けなければいけないのは、映画の代金、サンクコストだけでなく、有効に使えたかもしれない1時間半という時間も無駄にしてしまうことです。

日本人は「せっかくここまでやったんだから」という考え方に縛られてしまう傾向が強いそうです。

何かをやめるかやめないかを決めるときに2つのパターンがあります。

  1. 「もう少しで成功するから、諦めずにがんばろう」
  2. 「せっかくここまでやったんだから、諦めずに頑張ろう」

1番はこの先成功しそうだという「未来」を見ています。

2番は今までこれだけやってきたという「過去」を見ています。

同じ諦めないという判断でも2つの考え方によって結果は全然ちがうものになってしまいます。

このように、サンクコストが足を引っ張って勝てる見込みが無いのにやめどきを見失ってしまう。

その結果、サンクコスト以上に損をしてしまうこともあります。

勝てない戦はしない、でも、戦うことはやめないことが大事です。

「何も諦めない」のは果たして幸せか?

人間だれしも幸せになりたいと思っています。不幸になりたい人なんていないはずです。

幸せになるために何も諦めたくないと思っているとかえって幸せが逃げて行ってしまいます。

仕事も諦めない、家庭も諦めない、自分らしさも諦めない。なぜなら幸せになりたいから。

でも、1日の時間は24時間と限られています。仕事と家庭に同じ時間を割くことはできません。

むしろ、何か1つだけ諦めないものを決めて他のことはどっちでもいいやぐらいに割り切ったほうが、幸福感が実感できるはずです。

これは、どちらかを完全に諦めることではありません。

大切なことは「自分の中の優先順位」を明確にしておくことです。そうしないと、自分に対する不満がたまっていくばかりでつらくなってしまいます。

「仕事もしたいのにできていない」

「子育てにもきちんと取り組みたいのにできていない」

あれもこれも手に入れたいと思っていると常に、「できていない」「足りていない」という不満がたまり息がつまります。

なんでかんでも手当たり次第に手に入れることで、幸福が得られるわけではありません。

むしろ、ある一定の段階まで来たらいらないものを仕分けすることが幸せに近づく方法です。 

まとめ:諦めることは悪くない、自分の中の優先順位を考えよう

日本人は特に諦めるという言葉をネガティブに考えがちです。

「諦めるのはまだ早い」

「ここまでやったんだから諦めずに頑張ろう」

そうして、勝てる見込みのないものをずるずると続けていくのではなく、見込みのないものは諦める。少しでも勝てる見込みのあるものに注げる時間を増やす。自分の中の優先順位を考えて、本来の目的である勝つために不要なものを諦める力が必要なのです。

「諦める」という言葉は「自分の才能や能力、置かれた状況などを明らかにしてよく理解し、今この瞬間にある自分の姿を悟る」です。

諦めるということはそこで「終わる」とか「逃げる」ということではない。

むしろ次のステップに行くために必要な言葉であり、ポジティブな言葉でもあるのです。

audibleでも聴くことができます。最初の1冊は無料で聴けます。

諦める力 〈勝てないのは努力が足りないからじゃない〉
耐える人生か。選ぶ人生か。 前向きに「諦める」ことから、自分らしい人生が開けてくる。 諦めることは、逃げることにあらず。 与えられた現実を直視し、限られた人生を思い切り生きるために、 よりよい選択を重ねていくことこそが「諦める」ことの本質である。 オリンピックに3度出場したトップアスリート・為末大が、 競技生活を通し...

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